生命を科学し、
美味さを設計する。
私たちの研究開発は、「なぜ、美味しいのか」という本質に向き合うことから始まります。経験や勘に頼るのではなく、その答えを生体科学という確かなファクトに求める。それが髙坂鶏の設計思想です。
「美味さの正体」を分子レベルで分析し、脂の融点や細胞構造まで科学的に検証する。そうして導き出した知見を飼育や栄養設計へと落とし込み、美味しさを一つひとつ確実に組み立てていく。この徹底した探究こそが、髙坂鶏の品質を支える原点です。
世界初、熟成を可能にした「無菌鶏」
── 「朝締め」の常識を打ち破る、新たな鶏肉の可能性。
従来の食鳥業界の常識では、鶏肉は「朝締め・新鮮」が最上とされてきました。しかし私たちは、科学的アプローチによって食中毒菌が一切検出されない世界唯一の「完全無菌鶏」を確立。これにより、丸鶏のままだけでなく、解体後や氷温下でも1ヶ月近くにおよぶ長期ドライエイジング(熟成)を可能にしました。熟成を経ることで肉質は驚くほど柔らかくなり、脂はクリーミーに変化。フレッシュな肉では味わえない深みのあるコクと甘み、なめらかな食感を引き出し、焼き物はもちろん刺身でも安心して提供できる安全性を両立しています。
歴史の不可能を覆した、
幻の「白肝」
── 偶然生まれた美味を、必然へ。
日本で初めて髙坂鶏が提供された際、その濃厚でクリーミーな白肝は、多くの料理人を驚かせました。その舞台となった「銀座 たて森」には、白肝を求めるお客様が連日訪れ、満席が続くほどの反響を呼びました。しかし、当初それは狙って生み出されたものではなく、偶然生まれた美味に過ぎず、品質を安定して再現することはできませんでした。
そもそも、鶏を意図して脂肪肝(白肝)にすることは、古代ローマの時代から不可能とされてきました。フォアグラのようにガチョウやアヒルに行う強制肥育を施せば、繊細な鶏はストレスから命を落としてしまう、というのがこれまでの通説です。
では、本当に実現できないのか。私たちはそうは考えませんでした。
「摂取量を増やせないのならば、生体の吸収効率を極限まで高めることで、同様の作用を生み出せないか」
この問いを解くために私たちが着目したのが、エサに含まれる「糖質とタンパク質の分子構造」の厳密なコントロールです。エサが体内で最も理想的なルートとスピードで代謝されるよう、分子レベルで配合のロジックを何年も突き詰めた結果、私たちは世界で初めて、内臓に過度な負担をかけることなく、再現性のある白肝づくりに成功したのです。
たまたま出会えるだけの、再現性のない美味は、私たちが目指すゴールではありません。私たちが求めたのは、この驚きを、いつでも確実に提供できる「必然の設計」です。これこそが、髙坂鶏農園の思想を最も純粋に証明しています。
鶏舎環境と飼育管理
髙坂鶏の安定した再現性を維持するため、私たちは客観的なデータに基づいて日々の健康状態を判断しています。増体、成長具合、糞の状態といった具体的な指標を毎日細かくチェックし、動かしようのない事実だけを基準にしています。
外部ストレスと病原体を遮断する「空間管理」
鶏のストレスを減らすため、京丹波町の鶏舎では徹底した環境管理を行っています。特注の高度断熱材と24時間稼働の空調システムにより、昼夜や季節間の寒暖差が激しい丹波盆地特有の気候にあっても、室内環境を常に一定に維持。最長120日間に及ぶ長期飼育を行う中で、鶏が寒暖差や外部環境によるストレスを感じることなく健康に成長できる環境を整えています。
さらに、カラスやネズミなどの病原体ベクター(媒介者)の侵入を物理的に遮断する独自の防護構造を構築し、外部からの病原菌持ち込みリスクを根本から排しています。
消化と代謝をスムーズにする「飼料・水質管理」
抗生物質や合成抗菌剤、肉の臭みの原因となるトウモロコシを一切排除し、米を主体に大豆タンパク、魚粉、海藻、乳酸菌培養水などを独自配合した消化吸収率の極めて高い餌を設計しています。さらに、鶏の食行動特性(大粒のみを嗜好選択する習性)による偏食を防ぐため、小分けにして完食させる独自の給餌リズムを徹底。粉末状の微量栄養素まで確実に摂取させ、消化管内の栄養バランスを均一に保ちます。
また、生体の根幹をなす水質管理にも妥協はありません。不純物や有害物質を徹底して除去した清浄で高い浸透性を持つ水を使用することで、体内での栄養素の代謝輸送をスムーズに促します。
これらの取り組みによって作られるのが、発酵優位の健全な腸内細菌叢(フローラ)です。活発な腸内細菌の動きと有益菌の拮抗作用が、カンピロバクターやサルモネラ菌などの病原菌の定着・増殖を効果的に抑制。極限まで高まった消化吸収率によって未消化物の排出量が激減し、悪臭の原因を根本から絶ちます。これにより、排出される糞はにおいがなくサラサラとした状態となり、極めて清潔な鶏舎環境を保つことができます。この健全な体内循環こそが、美しい内臓組織と、髙坂鶏特有の濁りのないクリアな後味を形作っています。
交差汚染を物理的に防ぐ「独自の解体技術」
適切な栄養設計によって育まれた鶏は、腸管壁のコラーゲン(膠原線維)構造が極めて緻密に発達し、物理的に高い引張強度と弾力性を備えます。この健全な腸管組織を前提として、屠鳥工程における独自の解体手技を確立しています。血抜き後、泄殖腔周囲を正確に切開し、脆弱な大腸・直腸部位を穿孔(破裂)させることなく一括で摘出。腸管内容物の肉体・内臓への付着を物理的に遮断することで、解体ラインにおける交差汚染のリスクを根本から排除します。
終わりなき進化
私たちの研究開発の根底には、極限の領域で勝利を追い求める、F1マシンに象徴される設計思想があります。
世界最高峰の品質基準を徹底的に解剖し、その本質を自らの科学的アプローチへと落とし込む。その上で、コストという制約をすべて度外視し、現時点で考えうる最高品質のプロトタイプを形にする。そこから何年もの歳月を費やし、地道な検証と改良を重ねることで、技術としての圧倒的な安定性を実証してきました。
現状に満足した瞬間から、退化は始まります。終わりなき検証を愚直に積み重ね、常に最新のクオリティへ更新し続けること。それこそが、髙坂鶏が進化を止めない唯一の理由です。